第4回グリーン・シーズ研究会は、本間格 教授「有機材料を用いたレアメタルフリー型リチウムイオン電池の研究開発」です

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第4回グリーン・シーズ研究会は、東北大学 多元物質科学研究所、金属資源プロセス研究センター長、本間 格 教授による「有機材料を用いたレアメタルフリー型リチウムイオン電池の研究開発」です。

この研究では、有機電極材料の分子構造設計を行うことで高いレドックス電位と可逆的な多電子レドックス反応を実現して、現行のコバルトやニッケルなどの酸化物を用いた無機系電極材料の蓄電性能を超える革新的なレアメタルフリーで、安価・高性能電極材料を創製します。

リチウムイオン電池のレアメタルフリー化が実現すれば、サプライチェーンリスクを回避できます。これは、電池産業の競争力強化、低コスト化と市場成長の貢献につながります。

最近の研究成果

本間教授の研究成果についてのプレスリリースを紹介いたします。(東北大学プレスリリースサイトより抜粋)

水分解の高効率化と低コスト化につながる新しいペロブスカイト触媒を開発 -水素エネルギー社会構築への貢献に期待-

東北大学多元物質科学研究所の本間格教授と岩瀬和至助教らの研究グループは、従来の触媒合成法と比較して低温である400 °Cでバリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなるペロブスカイト酸化物へF−置換を行うことで、F−の置換量を従来のOER触媒と比較して一桁向上させました。その大きなF−置換量により金属イオンの価数が大きく変化することで、OER活性が最大4倍程度(水分解反応全体で、2~4倍程度の性能向上と推定)まで向上することを見出しました。金属元素の価数はOER活性を決める重要な要素であることから、本研究で得られた知見は、今後の新規OER触媒の設計・合成に有用であると期待できます。

発表のポイント

  • バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)を含むペロブスカイト酸化物(注1) にフッ素(F)置換を行うことで、電気化学的水分解に重要な酸素発生反応の活性を向上させました。
  • 低温フッ素化処理により酸化物イオンがフッ化物イオンに置換されることで、金属元素(特にコバルト)の価数が変化したことが活性向上の主要因です。
  • 今後の水分解触媒も含めた触媒の高活性化の新たな設計指針として有用と考えられます。

注1.ペロブスカイト酸化物: 酸化物のうち、ペロブスカイト構造という特定の結晶構造を有する酸化物のことを指す。多くの場合、アルカリ土類金属元素と遷移金属元素、酸化物イオン(O2−)から構成される。

本成果は2023年3月24日(現地時間)に米国化学会の雑誌、Chemistry of Materials誌のオンライン版に掲載されました。

安価な鉄系正極材料の容量を2倍に リチウムイオン電池の低コスト化と高エネルギー密度化に期待

東北大学多元物質科学研究所小林弘明講師、本間格教授、名古屋工業大学大学院工学研究科中山将伸教授らの研究グループは、安価な鉄と酸素を用いた、レアメタルフリーかつ高エネルギーな新しいリチウムイオン電池正極材料の開発に成功しました。本研究では、メカニカルアロイング注4を用いLi5FeO4を準安定化させることで、これまで十分に利用できなかった鉄と酸素のレドックス反応の両方の利用が可能となり、LiFePO4正極に比べ約2倍の300 mAh/gを超える可逆容量を達成しました。サプライチェーンリスクを回避できる元素資源を用いてリチウムイオン電池の低コスト化と高エネルギー密度化が期待されます。

発表のポイント

  • レアメタルフリーかつ高容量なリチウムイオン電池正極材料を開発
  • 鉄元素の使用によりサプライチェーンリスクを回避し低コスト化
  • 鉄と酸素両方のレドックス反応注1を活用
  • 準安定相注2を利用することで高容量が実現

注1.レドックス反応:酸化還元反応のこと。還元(Reduction)反応と酸化(Oxidation)反応を略してレドックス (Redox)反応と呼ぶ。

注2.準安定相:ある環境(例えば室温、大気中)において、不安定な状態でありながらも、その状態を長時間維持することができる相のこと。今回開発した準安定相は、数百度まで加熱されなければ年単位でその相が維持される。

本成果は、2023年1月15日に米学術出版大手ワイリーの専門誌Advanced Energy Materials誌にオンライン掲載されました。

「最先端研究を訪ねて」に本間先生の研究が紹介されています

こんな研究をして世界を変えよう ~大学の研究室を訪問してみた」サイトの「最先端研究を訪ねて」で、先生の研究が紹介されています。こちらのサイトは、専門分野である各学問では、どんなリアルな研究がなされ、それがどのように社会とつながり、どのように社会を変えようとしているのか、一般の人にも理解できるように編集されているものです。内閣府/総合科学技術・イノベーション会議のエビデンス事業の一環で、エビデンスシステムである e-CSTIと連携したHPになります。(以下、サイトより抜粋)

どんな成果が上がったか

私は、環境に優しく負荷をかけない電源システムとして、レアメタルを使わない、レアメタルフリー高容量電池の開発に成功しました。

材料コストを従来の5分の1以下に抑えられる、非常に微小なサイズの有機材料を使った二次電池です。通常、正極にはリチウムを用います。その代わりに、有機正極材料を用いた新しいタイプのリチウムイオン電池を作ってその性能を測ったところ、電池の蓄積容量が従来の2倍を示しました。

また、レアメタル以外の水素、酸素、炭素、塩素、硫黄というたった5つの軽元素を用いても、自動車のバッテリーとして広く利用されている、鉛蓄電池クラスの性能を持った二次電池の開発にも成功しています。

レアメタルを使わない、レアメタルフリーの高いエネルギーを蓄えられる二次電池は、再生可能エネルギーの普及に役立つと大きな期待が寄せられています。(詳細はサイトよりご覧ください)

本間研究室について

2010年4月に発足した本間研究室では21世紀の科学技術が取り組む最重要課題である地球持続技術・低炭素社会構築の為にナノテクノロジーを利用した再生可能エネルギー技術のフロンティア開拓を行います。低環境負荷プロセッシングと機能性ナノ材料開発をコア技術として、二酸化炭素変換、次世代二次電池、キャパシタ、燃料電池等の革新的エネルギーデバイスを創生し、再生可能エネルギー普及と地球温暖化対策のイノベーションを起こすことを目的としています。

革新的エネルギーデバイスを実現するために、単原子層材料(グラフェン、層状金属化合物)、ナノ粒子、ナノポーラス物質、多元組成化合物、準安定相、有機活物質、擬似固体電解質、超臨界流体・水熱電解プロセス技術や放射光オペランド分析等の先端的な材料科学を探求し、それらの先端的ナノ材料科学を基礎学理として高容量・高出力型ポストリチウムイオン電池、大容量キャパシタ、燃料電池、太陽電池など低炭素化社会構築と産業競争力強化に資するエネルギーデバイスの研究開発を行います。(以上、本間研究室HPより抜粋)

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