GREEN GOALS LETTER vol.1|NEWSTOPICS・渡邉賢 教授 研究会レポート

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“GREEN GOALS LETTER”とは?

東北大学グリーンゴールズパートナーの活動内容や、グリーン未来社会の実現に向けて行われている東北大学の研究やさまざまな取り組みについて、情報発信してまいります。

東北大学 GREEN TOPICS

1.カルシウム蓄電池の長期繰り返し充放電に成功”資源性に優れる元素のみ” から作られる次世代蓄電池開発が前進

電気自動車やスマートグリッド注1などのエネルギーシステムを社会全体に普及させることに向けて、資源が豊富で、蓄えられるエネルギー量が大きい次世代の蓄電池が求められています。

カルシウムは地殻中に5番目に多く存在し、安価で入手しやすい元素です。金属カルシウムを用いることで高いエネルギー密度も実現可能であるため、カルシウムイオンやその金属を用いたカルシウム蓄電池が注目され始めています。

一方、安定性や可逆性を有する電極材料や電解液が課題となっており、数十サイクル以上の繰り返し充放電可能な電池は、これまで報告されてきませんでした。

東北大学 金属材料研究所の木須一彰助教と同大学材料科学高等研究所(AIMR)の折茂慎一所長(金属材料研究所教授を兼務)、トヨタ北米先端研究所のRana Mohtadi博士(AIMR主任研究者を兼務)の研究グループは、天然鉱物としても知られるコベライト(銅藍、硫化銅)に着目し、ナノ粒子化と炭素材料との複合化を行うことで、カルシウムイオンが大量に貯蔵可能な正極材料を開発しました。

さらに水素クラスターを含む電解液を用いることで、コベライト正極とカルシウム金属負極を組み合わせた電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電を実現しました。

本成果は、2023 年 5 月 19日(オランダ時間)に国際学術誌Advanced Scienceにオンライン掲載されました。(2023年5月23日:金属材料研究所 水素機能材料工学研究部門 助教 木須一彰)

注1. スマートグリッド:電気利用量をリアルタイムで把握し、そのデータを活用して電力の有効利用を実現するエネルギーシステム

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ)

2.常温で異種デバイスを積層する新技術を開発 -微小なLEDなどを3D-ICの上に一括接合が可能に-

半導体チップ面積を広げたり、素子や配線幅を微細化しなくても集積度を高められる三次元積層型集積回路(3D-IC)の研究開発競争が世界中で激化しています。普及を進めるためには化学組成や熱膨張率の異なる薄膜層、異なるデバイスをいかに熱変形無しで積層するかが課題になっています。

東北大学大学院工学研究科の福島誉史准教授と田中徹教授らの研究グループは、3D-ICの作製技術ならびに異種デバイスとの三次元集積を容易にする新たな常温金属接合技術を開発しました。熱応力を負荷することなく、極めて薄い3D-ICチップ上に多数の微小なデバイスを集積できることを実証しました。種々のデバイスやセンサと高度に集積したモジュールの作製が可能となり、ウエアラブルデバイスやポスト5G注4社会に貢献することが期待できます。

本成果は、2023年1月19日に国際電気電子学会(IEEE)などが発行する電子デバイス専門誌IEEE Electron Device Lettersで公開され、表紙として採用されました。
(2023年2月9日:大学院工学研究科機械機能創成専攻 准教授 福島誉史)

詳細はこちらから(東北大学工学研究科・工学部WEBサイト該当記事へ)

3.小林秀昭教授が国際燃焼学会のGold Medalを受賞 - 高圧乱流燃焼およびアンモニア燃焼の卓越した研究 –

流体科学研究所の小林秀昭教授は、2022年7月24日から29日までカナダ バンクーバーで開催されたThe Combustion Institute主催による第39回国際燃焼シンポジウムにおいてThe Bernard Lewis Gold Medalを受賞しました。日本人として18年ぶりの受賞です。

小林秀昭教授は、極限環境における燃焼現象の解明に長年取り組み、とりわけレシプロエンジンやガスタービン内の燃焼現象である高圧乱流予混合火炎の特性を詳細に明らかにするなど、基礎燃焼科学において顕著な成果を挙げてきました。

これらの経験を基に、近年ではカーボンフリー燃料であるアンモニア燃焼の研究に取り組み、アンモニア低NOx燃焼技術等を開発し、カーボンニュートラル実現に向けたアンモニア利用技術研究の先駆けとなりました。これらが契機となり国際的燃焼コミュニティーにおいてアンモニア燃焼への関心が高まり、エネルギー分野の脱炭素化に向け、世界各国で数多くのアンモニア燃焼研究が開始されています。

The Combustion Instituteは1954年に設立され、米国ピッツバーグに本部を置く歴史ある国際学会です。世界各国で2年に一度開催される国際燃焼シンポジウムにおいて、燃焼科学に顕著な業績を有する研究者を称えGold Medalが授与されます。メダルの名称であるBernard Lewisは燃焼科学の先駆者でありThe Combustion Institute創設者のひとりです。

受賞を受け、小林秀昭教授は、「今回の受賞によって、極限環境における燃焼研究が評価されるとともに、脱炭素技術であるアンモニア燃焼の重要性が国際的に認知され、我が国ならびに東北大学の貢献が認められた」と話しています。(2022年8月18日:東北大学流体科学研究所 教授 小林 秀昭)

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ)

第1回 グリーン・シーズ研究会 レポート

GGPseason3の第1回グリーン・シーズ研究会は、東北大学大学院工学研究科附属、超臨界溶媒工学研究センターシステム開発部、渡邉 賢教授による「水を用いた資源変換:プラスチック、LIB、バイオマス」です。(以下講義から引用)

渡邉先生

超臨界という技術

私たちがすすめている超臨界という溶媒は、コロナを機に世の中が変わったことと環境問題もあわせて、需要が高まっていると感じています。世界的に石油ではなく、水や二酸化炭素を使う方向に舵を切ろうとしているからです。

本日の講義資料には、水の状態図や物性値についてのスライドがあります。今後、目にする機会が増えていくと思いますので、水が持つ物性の活用方法を皆さんと情報共有したいと思います。

また、今回は主に水の話をしますが、二酸化炭素を使った技術開発も多く行っていますので、CO2使用に関して気になることがあれば、いつでもご相談ください。反応溶媒として水を使ったプロセスの開発プロジェクトも複数ありますのでご紹介できます。

SDGs社会へ向けて

今回、講義テーマの副題に「プラスチック・LIB(リチウムイオン電池)・バイオマス」という言葉を付けた理由は、昔から言われているプラスチックのリサイクルと、最近根付いてきたリチウムイオン電池、そしてこれから使用していくバイオマスといった、いずれも水を使った技術が日本でも実用化されようとしているからです。

日本も炭素循環社会に向けた実用化が本格化しています。CO2から作る燃料をAFというのに対して、植物油あるいは動物油から作る液体燃料をSAF(Sustainable Aviation Fuel)と呼びます。まずは、SAFやプラスチック油化などが超臨界を使って実際にどう活用されているのかをお話しします。

(続きはGGPのご参加による見逃し配信でご覧いただけます。)

講義内容

  1. SAFやプラスチック油化など超臨界水技術の実用化
  2. 水の相図と物性
  3. 加水分解性プラスチックの相平衡と反応性
  4. ポリエチレン・重質油の反応と相平衡
  5. リチウムイオン電池の水熱酸浸出とイオンの解離
  6. バイオマス(セルロース素材)と水との反応
  7. まとめ

(引用以上)

講義前週に学会出席のため渡欧されていた渡邉先生は、学会後は超臨界溶媒の研究が盛んなドイツへ行かれ情報収集をされてこられました。帰国後声があまり出ない状況にお詫びされていましたが、何とか聞き取りやすいよう講義をしていただきありがとうございました。体調は大丈夫とのことでしたが、声の早い快復をお祈りします。

第2回グリーン・シーズ研究会は6月22日開催

次回6月22日開催の第2回グリーン・シーズ研究会は、工藤朗 助教による「光造形3Dプリンティングを用いたカーボンマイクロ構造の作製と応用」です。

現在人類が直面するエネルギー・環境問題の解決策を考えるにあたって、既存の作製方法にとらわれない新素材の開発は大変重要です。造形の解像度とスピードのバランスに優れる光造形3Dプリンティング(SLA)は、大学での研究・開発用に近年普及しており、樹脂だけでなく様々な素材を用いてマイクロ構造の作製ができるようになりました。

本講義ではSLAを用いたカーボンマイクロ構造の作製と応用について、軽量・高強度な構造材料と、従来の容量・レート特性を上回る蓄電機能材料としての側面を中心にご紹介します。

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