GREEN GOALS LETTER vol.3|NEWSTOPICS・福島 康裕 教授 研究会レポート

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“GREEN GOALS LETTER”とは?

東北大学グリーンゴールズパートナーの活動内容や、グリーン未来社会の実現に向けて行われている東北大学の研究やさまざまな取り組みについて、最新情報をお届けします。

東北大学 GREEN TOPICS

1.充放電による蓄電池電極劣化の経時的進行を3次元でとらえる新技術を開発 ~全固体電池をはじめとした次世代型蓄電池の長寿命化に貢献~

スマートフォンなどの携帯電子機器の充放電を繰り返すと、次第に電池残量の減りが速くなります。この大きな原因の一つとして、これらの機器に搭載されている蓄電池の蓄電容量などの性能が、繰り返し充放電に伴い、次第に劣化していくことが挙げられます。このような性能劣化のメカニズムを理解することは、リチウムイオン電池や、全固体電池をはじめとする次世代型蓄電池の長寿命化を実現する上で重要な課題となっています。

東北大学を中心とする共同研究グループは、コンピュータ断層撮影―X線吸収微細構造法(CT-XAFS法) (注2)を用いて、充放電サイクル中の蓄電池電極内の容量劣化(活物質のLi量の変化)の3次元的な空間分布およびその時間進展を非破壊かつ定量的に追跡できる手法を開発しました。これにより、蓄電池の劣化に関する5次元の情報(3次元空間分布+時間発展+化学情報)を解析することが初めて可能となり、劣化がいつ、どこで、どのように起こるのかをより詳細に理解できるようになりました。本手法は、全固体電池などの蓄電池の長寿命化への貢献が期待されます。

本成果は、2023年7月14日(ドイツ時間)に、マイクロからナノメートルスケールの解析技術専門誌Small Methods誌に掲載されました。

本研究は東北大学多元物質科学研究所の木村勇太助教、石黒志助教、中村崇司准教授、雨澤浩史教授、大学院工学研究科機械機能創成専攻の黄溯大学院生、高輝度光科学研究センターの関澤央輝主幹研究員、新田清文研究員、宇留賀朋哉任期制専任研究員、産業技術総合研究所の奥村豊旗主任研究員、竹内友成上級主任研究員、名古屋大学の唯美津木教授(理化学研究所放射光科学研究センター客員研究員)、京都大学の内本喜晴教授らの共同研究グループにより行われました。(2023年7月19日:多元物質科学研究所 助教 木村勇太、多元物質科学研究所 教授 雨澤浩史)

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ)

2.発電用ガスタービンのデジタルツインをスーパーコンピュータ上で実現 ~脱炭素デジタル社会の電力安定供給に貢献~

電力の安定供給は持続可能社会にとって欠かせません。電力負荷変動に即応できる、次世代型の高性能・高効率・長寿命な発電用ガスタービンを実現するため、その作動や故障の条件を予測する研究が進んでいます。

大学院情報科学研究科の山本悟教授らの研究グループは、発電用ガスタービンの翼破損などに繋がる致命的な作動状態に至る作動条件を設計段階や運用前に短期間で予測することができる、デジタルツインプラットフォーム「デジタルツイン数値タービン」を、東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータAOBA上に構築しました。

同研究科の小林広明教授が代表を務める文部科学省次世代領域研究開発を通して研究開発されたデジタルツイン数値タービンは、発電用ガスタービンの様々な作動条件を設定した数十ケースの大規模全周計算を約1週間で完了させることができます。計算により得られたビックデータは機械学習による自己組織化で1つのマップ上に分類され、ガスタービンの異常な作動状態に至る作動条件をそのマップから瞬時に予測することができます。

本研究成果は6月29日(現地時間)、ガスタービン分野の国際会議、米国機械学会ASME Turbo Expo 2023で発表されました。(2023年6月30日:大学院情報科学研究科 教授 山本 悟)

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ)

3.炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の曲げ振動発電・蓄電でセンサ情報のワイヤレス送信を実現 ― スポーツ用品や航空・宇宙機器のIoT化に期待 ―

モノのインターネット(IoT)(注1)センサの電源として環境発電(注2)の利用が期待されています。環境発電を行う材料のうち、圧電材料は環境中に存在する未利用の運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。航空機・宇宙船などの移動体に生じる振動を利用し、IoTセンサを駆動できれば、外部電源や電池交換が不要になり、航空・宇宙システムの自律性と信頼性が向上します。

 東北大学大学院環境科学研究科の成田史生教授(工学部材料科学総合学科兼担)のグループは、英国リーズ大学 のYu Shi教授と共同で、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)(注3)電極からなる新しい圧電振動発電デバイスの開発に成功しました。CFRP電極は優れた導電性を有し、圧電材料である圧電ナノ粒子をプラスチックに分散した圧電ナノコンポジットの機械的特性を劇的に向上させ、共振時の出力電力を安定に確保することができます。

 今回開発した片持ちはり(注4)形状の炭素繊維強化圧電振動エネルギーハーベスタは、固定端に0.05 mmの変位振幅を与えた場合に約90 mW/cm3 の高出力電力密度を示し、LED電球を容易に点灯させることができます。また、この技術はワイヤレス通信システムの電源として大きな応用可能性を示し、IoTセンサ分野はもちろん、スポーツ・レジャーや航空・宇宙の分野で、CFRPの新しい展開が期待されます。

 本研究成果は2023年6月13日、ナノテクノロジーとエネルギーの専門誌Nano Energyに掲載されました。(2023年6月15日:大学院環境科学研究科 教授 成田 史生)

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ)

第3回 グリーン・シーズ研究会 レポート

GGP 第3回グリーン・シーズ研究会は、東北大学大学院環境科学研究科 先端環境創成学専攻 資源循環プロセス学講座(環境グリーンプロセス学分野)、福島 康裕 教授による「カーボンニュートラルに向けた技術のシステム化」です。東京の日本橋ライフサイエンスビルディングにて対面開催で行いました。(以下講義から引用)

はじめに

「カーボンニュートラルに向けた技術のシステム化」について講演させていただきます。
グリーンシーズ研究会ということで、皆さんは大学研究者の話を聞きにいらしてるのだと思います。
シーズといってもいろいろあり、さまざまな技術が思いつきますが、私が手掛けているのは技術の中でも「システム化技術」と呼ばれる部分になります。技術そのものというよりは、技術をどのように見つけ出し、つなげ、システム化するか。今日はこのことについてお話します。

化学工学について

私の所属は化学工学科です。物質変換を実現する化学の力は、化学反応ひとつだけで何か物が作れるということではありません。

複数の化学反応を繋がなければいけませんし、化学反応は100%進むわけではないので、未反応の原料と混ざった形で出てくることもあります。これを分離・生成して、未反応の原料をリサイクルし、もう一度反応に供与するために、分離やリサイクルが必要になってきます。そしてエネルギー・熱を供給したり、取り除いたりをうまく組み合わせて、システム化して物を作るというのが化学工学の姿になります。

そこから始まったプロセスシステム工学というのが私の専門になります。昨今では 化学工学だけにとらわれず、どこから原料を調達してくるか、廃棄物はどこに渡すのか、排熱はどうするのかなどを含めて、よりマクロにシステム化をしています。

それだけでなく、エネルギーや資源、地球規模の大きな流れまでを全部考え、現在だけでなく将来の姿も想像しながらどういった化学プロセスを作っていけばいいか、どういった技術に投資をしていけばいいか。守備範囲を広げて研究を進めています。

私の研究は膨大な範囲になるため、この講義ではカーボンニュートラルに焦点をしぼります。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、設計の目的というものが従来のものと比べてどう変化しているか。それに伴いシステムのあるべき姿も変化していますので、その点についてお話ししたいと思います。

具体的には植物資源の資源化としてのバイオマス、排ガス空気中からCO2を取り除きそれを利用するという話をします。

化学とシステム

化学を何かの役に立てようと思ったら、必ずシステム化しなくてはいけません。

化学とは、物質の構造や性質、反応を研究する学問です。一方、化学工学(ケミカルエンジニアリング)とは、物質の構造、性質、反応を理解して役立てるための学問です。本質的に化学工学というのはシステム化の学問ということになります。

例えば何の役に立つのかというと、公害防止、様々な分析方法・分析デバイスの開発、新材料の開発、新しいデバイスでは燃料電池・エネファームエコキュートなどの新しいデバイスをはじめ、化学が関連する様々なものを挙げることができます。

薬も手掛けています。IPS細胞をいかに大量培養して安く皆さんに届けるかを研究している化学工学の仲間たちもいます。エネルギーについては私も守備範囲なので、様々な製造方法を提言し、省エネルギー対策や環境負荷を下げるためにプロセスを新しくしたりもしていします。

資源循環では、廃棄物を出さない、または廃棄物の有効利用でコストを下げたり競争力をつけたり環境負荷を下げることもやってきました。

大事なのは役立つ「システム」を構築すること。そのために研究を展開しています。

新結合形成とは、現状をシステムとして分析し、新発見なしでも役立つ革新システムを見出すこと。イノベーションという言葉は、新結合で作ることと説明されますが、現状をシステムとして分析し、新発見なしでも新しい結合を生むことによって、新しい機能・素晴らしい機能を持つシステムを作ろうとしています。

新しい技術を生かすシステムがどういうものかを考えることは普通のことです。そのうえで、欲しいシステムを飛躍的に向上するための技術を考え、開発の場にフィードバックしていくことも手掛けるようになってきています。

講義内容

  • システムとは何か
  • バイオマス
  • 炭素固定利用の分析
  • システムの創造:誰でもできるようにならないか
  • グリーンウォッシュ
  • システム化で共創へ

略歴

私は東京大学の化学システム工学専攻で学位を取り、その後そこで2年間助手をやりました。そのあと10年間は台湾の國立成功大学で研究室を持ち教鞭をとりました。家族の事情で日本に戻りたいと思っていた頃、東北大学とご縁があり帰国しまして、2020年に教授へ昇任。2022年に配置換えで工学研究科から環境科学研究科に移りました。

私が学生だった頃、大学には「〇〇システム科」という学科がたくさんできました。それだけ「システム」というものが注目された時期だったと思います。私も「システム」について学び、研究対象としてきました。

謝辞

國立成功大学・東北大学の研究室の学生・スタッフの皆さん、共同研究者のみなさん。CO2の固定に関する「ムーンショット型研究開発事業」という内閣府の大型プロジェクトに採択いただくためご助力いただいたみなさん。

(続きはGGPのご参加による見逃し配信でご覧いただけます。)

(引用以上)

第4回グリーン・シーズ研究会は8月3日開催

次回8月3日開催の第4回グリーン・シーズ研究会は、本間 格 教授による「有機材料を用いたレアメタルフリー型リチウムイオン電池の研究開発」です。

本研究では有機電極材料の分子構造設計を行うことで高いレドックス電位と可逆的な多電子レドックス反応を実現して、現行のコバルトやニッケル等の酸化物を用いた無機系電極材料の蓄電性能を超える革新的なレアメタルフリーで安価・高性能電極材料を創製します。

リチウムイオン電池のレアメタルフリー化が実現すればサプライチェーンリスクを回避できるので、電池産業の競争力強化、低コスト化と市場成長に貢献します。

講義では先生の研究内容の他に、レアメタルについての状況や有機素材の可能性についてもお話頂く予定です。商社や証券系の企業でもお話をされている本間先生の、レアメタル地政学的なお話も非常に楽しみです。

PARTICIPATION
参加方法