東北大学 GREEN TOPICS
1.世界初のカーボンリサイクル技術による廃棄物を原料とした炭化ケイ素(SiC)合成研究を推進 脱炭素と循環型社会構築に貢献する新技術の実証に挑戦
二酸化炭素を資源として活用するカーボンリサイクル技術は、カーボンニュートラル社会を実現するためのキーテクノロジーとして位置づけられています。東北大学大学院工学研究科応用化学専攻の福島潤助教および滝澤博胤教授は、世界初のカーボンリサイクル技術として開発した、「CO2を炭素源にした炭化ケイ素を合成する技術」をシーズとして、CO2を炭素源とした産廃由来炭化ケイ素合成に係る検証研究を推進します。(2022年5月11日:工学研究科応用化学専攻 助教 福島潤)
2.植物の乾燥適応経路を抑制する天然化合物の同定 – 緑茶で植物もストレスから開放される –
緑茶に含まれるカテキンは、抗酸化作用や抗菌作用など人体に良い効果が期待されていますが、植物のストレス低減や生理的な反応にも影響を与える可能性がありそうです。東北大学大学院工学研究科の魚住信之教授らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科、岡山大学、ミラノ大学との共同研究で、植物の気孔の開閉調節を担うイオン輸送体を阻害する2つの天然化合物を緑茶の成分から見いだしました。これら化合物は天然除草剤・バイオスティミュラントの候補物質としても期待されます。(2022年5月 18日:工学研究科バイオ工学専攻 教授 魚住信之)
3.リチウムやナトリウム金属の針状析出発生抑制に成功 アルカリ金属負極蓄電池の実現へ向けた大きな一歩
東北大学大学院工学研究科のグループは、不純物元素を大量に含むアルミニウムスクラップを純アルミニウムに再生できる技術を開発しました。しかも、その際にかかるエネルギーがアルミニウム新地金をアルカリ土類金属塩などの多価イオンを電解液に添加することにより、リチウムやナトリウム金属は、比較的平坦な析出形態になることを発見しました。これは、金属負極電池に向けた新たな電解液設計指針を与えるものです。多くの超えるべき課題を解決する端緒となり、実用化への大きな一歩になることが期待されます。(2022年5月 23日:金属材料研究所 教授 市坪哲)
グリーンシーズ研究会(5月)レポート
第4回目のグリーンシーズ研究会は、東北大学多元物質科学研究所の小俣孝久教授にご登壇いただきました。演題は「時代を切り拓いてきたのはいつも新しい材料だった―エネルギー・資源・環境問題を解決する切り札は・・・」です。
今回は、日本橋ライフサイエンスビルの会場とWebによるハイブリット形式で開催され、講義終了後の交流会・名刺交換会も大変盛況に終わりました。
講義の冒頭、
- 他人の手あかのついたものは触らない(オリジナルな材料、プロセス)
- 最初の一歩(萌芽期・黎明期の大学らしい研究)
といった小俣教授が大切にされている研究ポリシーが紹介されました。その志の高さに感銘を受けるとともに、アカデミアにおける研究の意義を改めて認識する機会となりました。
低炭素、低環境負荷型社会の実現には、私たちの暮らしを支えるエネルギーの新しい製造方法や、限られたエネルギーや資源を有効に使う方法など、解決していかなければならない課題が残されています。人類がこれまでに成し遂げてきた幾つもの歴史的変革の多くは、新しい材料の発明により成し遂げられてきました。小俣先生は、人類が今直面しているこれらの課題をブレークスルーする新しい材料を創りだし、クリーンエネルギーと省エネルギーを両輪とする21世紀型社会の構築に貢献することを目指し、次世代太陽電池材料の開発、次世代燃料電池材料の開発、次世代ディスプレイ・証明材料の開発といった研究課題に取り組まれています。※1
講義の最後に「同じ課題に関する研究に見えても、大学では研究者それぞれが自身の哲学を持ち、さまざまなアプローチで多種多様な研究を展開しています。どの先生もみなさんからのコンタクトを待っていると思うので、ぜひ気楽にお問い合わせをいただければ。」と和やかに話されました。
※1 小俣研究室ホームページより|http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/omata/research/
グリーンシーズ研究会のオンデマンド視聴について
グリーンゴールズパートナーにご参画いただくと、5月の小俣先生のご講義をふくむ、これまでのグリーンシーズ研究会の講義パートをオンデマンド動画でご覧いただけます。
現在配信中のグリーンシーズ研究会オンデマンド動画
- 2月|演算性能と消費電力のジレンマを解決する『スピントロニクス半導体 』 でカーボン・ ニュートラルと半導体戦略に貢献する(遠藤哲郎教授)
- 3月|リアルタイム津波浸水被害予測技術が拓く新しい防災情報(越村俊一教授)
- 4月|プラスチックリサイクルと炭素循環(吉岡敏明教授)
- 5月|「時代を切り拓いてきたのはいつも新しい材料だった―エネルギー・資源・環境問題を解決する切り札は・・・」(小俣孝久教授)