GREEN GOALS LETTER vol.6|NEWSTOPICS・成田史生教授 研究会レポート

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GGL_vol.6

東北大学 GREEN TOPICS

1.東北大発の磁性材料”センダスト合金”、 発見から90 年目で再び脚光 ~超高感度磁気センサへの応用に期待~

センダスト合金は、1932年に東北大学金属材料研究所の増本量名誉教授、山本達治氏により発見され、優れた軟磁磁気特性を示すことから、ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドなどに応用されてきました。仙台で生み出され、粉(ダスト)にしやすいことからこの名称がつけられました。ところが、軟磁気特性を示す化学組成は組成図上の一点のみであり、その作製が非常に困難であることが従来の常識でした。

東北大学大学院工学研究科博士後期課程2年の赤松 昇馬氏と大兼 幹彦教授らは、センダストの軟磁気特性発現機構の謎を解明し、原子規則度の制御によって、広い組成範囲で軟磁気特性を実現しました。さらに、優れた軟磁気特性を示す薄膜試料の作製に成功し、最先端スピントロニクス材料として応用可能であることを示しました。このセンダスト薄膜は、脳磁場などの微弱な生体磁場を検出可能な超高感度スピントロニクス磁気センサの感度を飛躍的に向上させる新材料となることが期待されます。(2022年6月17日:工学研究科応用物理学専攻 教授 大兼幹彦)

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2.低温プロセスで接合できる耐熱200℃のナノソルダー接合材料を開発 ―脱炭素社会に向けた材料ソリューションを提供

NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で「ナノソルダー実用化による製造プロセス省エネ化技術の開発」に取り組むパナソニック ホールディングス(株)は、このたび東北大学、大阪教育大学、秋田大学、芝浦工業大学と共同で、従来よりも低い温度で電子部品を接合でき、接合後はパワーデバイスに必要な耐熱性が得られるナノソルダー接合材料を開発しました。本開発では、低融点金属と高融点金属を組み合わせた固液反応を用いることで、低温かつ短時間プロセスでの接合と200℃耐熱の両立を達成しました。

本開発の成果により、産業機器や電気自動車、鉄道などで使用されるパワーデバイスの組立工程に広く展開することが可能となり、パワーデバイス製造プロセスの省エネルギー化とともにカーボンニュートラルの実現に向けた大きな前進が期待できます。(2022年6月21日:工学研究科 准教授 林大和)

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3.3Dプリンタを活用した 見えない地熱資源の流れを推定する手法の開発と検証 持続可能な地熱開発のための能動的水循環システム構築に向けて

地熱開発では、発電に利用した水を地下に戻して、地下の熱で温めた熱水・蒸気を再び発電に利用するという能動的な水循環を作り出すことができれば、持続的な開発を進められると考えられています。しかし、冷めた水を戻すことで地下が冷えてしまい、蒸気や熱水の生産自体に影響を与えてしまうのではと恐れて積極的に開発に導入されてきませんでした。

東北大学流体科学研究所の鈴木杏奈准教授、同大学院工学研究科橋田俊之教授ら、米コーネル大学Robert Frederick Smith記念化学生体分子工学部のAdam J. Hawkins博士研究員は共同で、温度の計測結果を利用することで、地下に戻した水の再加熱に大きく影響する流路表面積を推定する手法を開発しました。さらに3Dプリンタを用いた流動実験を通して、推定手法の検証を行いました。その結果、3Dプリンタで作製した模擬地下構造の推定も誤差の範囲内であり、また、フィールドへ適用した場合も、他の測定値や数値計算の結果と整合的な結果を示しました。本研究成果によって、地熱発電所の電力生産予測、持続的な開発戦略に貢献できると期待できます。(2022年6月28日:流体科学研究所 准教授 鈴木杏奈)

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グリーンシーズ研究会(6月)レポート

第5回目のグリーンシーズ研究会は、東北大学大学院環境科学研究所の成田史生教授にご登壇いただきました。演題は「環境に配慮したマルチファンクショナル複合材料の設計・開発・評価」です。

成田先生
成田先生にご登壇いただきました。

様々な業界におけるIoT技術の拡大は、環境・資源・労働コスト面への負荷が考えられます。その負荷を解消するため、成田先生は「複合材料」を研究テーマとし、二つ以上の素材を組み合わせ、単一材料では到達できない優れた特性をもった複合材料を数値シミュレーションで設計し、その性能調査を研究されています。

講義の前半では炭素繊維と樹脂の複合材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の活用例から、エネルギー・ハーベスティング(環境充電:光・振動・蓄熱・体温・水力・電磁波など身の回りにあるわずかなエネルギーを収穫して電力に変換する技術)によるIoT発展への展望が紹介されました。

後半では、石油由来の合成繊維に代わる製品として研究が進められている、セルロースナノファイバー蚕糸(蚕の人工餌に植物ナノ繊維を混ぜることで得られた強化シルク)をご紹介いただきました。脱石油繊維の取り組みとして、東京オリンピック・パラリンピック両大会の式典でUAE選手団が身に着けていたスカーフにシルクを使用するプロジェクトに関わられたことは、とても貴重なお話で、QAセッションでも関心が寄せられました。

参考:東北大学大学院工学研究科・工学部 マテリアル・開発系 研究者プロファイル|https://www.material.tohoku.ac.jp/profile/profile_10/

グリーンシーズ研究会のオンデマンド視聴について

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