GREEN GOALS LETTER vol.7|NEWSTOPICS・深見俊輔教授 研究会レポート

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東北大学 GREEN TOPICS

1.可視光の80%を通すほぼ透明な太陽電池を開発 ―環境調和型次世代クリーンデバイスに貢献― 11月17日(木)グリーンシーズ研究会にご登壇予定!

あらゆる場所に設置可能となることから、透明太陽電池は環境調和型の次世代クリーンエネルギーデバイスとして大きな注目を集めています。しかし”透明”には明確な定義が存在せず、従来の”透明太陽電池”と呼ばれているものでも、可視光透過率は60%程度以下であり、目視で存在がはっきり確認できる”半透明な太陽電池”がほとんどでした。

東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の加藤俊顕准教授、何杏特任助教(研究当時在籍)、金子俊郎教授らのグループは、原子オーダーの厚みをもつ半導体2次元シートである遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を活用することで、可視光透過率約80%の肉眼でほぼ存在が認識できないレベルの高透明太陽電池の開発に成功しました。さらに、TMD太陽電池のナノスケール基本ユニットの最適構造を見出し、これらを1cm2に集積化することにより実用デバイスを駆動できるレベルの電力(~420 pW)が発電可能であることを実証しました。この技術を活用することで、今後身の回りの様々な生活環境で微小エネルギー発電が可能となり、エネルギー問題と環境問題を同時に解決可能な革新的社会貢献が期待できます。(2022年7月12日:工学研究科 准教授 加藤俊顕)

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2.3Dプリント技術でナトリウムイオン電池最高性能を達成 〜連続的3次元多孔構造を持つ新材料「カーボンマイクロラティス」で高容量化の限界を突破〜

昨今、化石燃料からのエネルギー転換が求められる一方で、再生エネルギーを貯蔵するデバイスに必要な資源の確保が新たな課題となっています。現在最も普及している蓄電デバイスはリチウムイオン電池ですが、その生産にはリチウムやコバルトなど、産出される地域や量が限られる資源が必要です。

次世代を担う蓄電デバイスとして、リチウム以外の様々な金属イオンを用いる研究がなされています。海に囲まれた日本にとって、海水中に豊富な資源を使用できるナトリウムイオン電池は資源確保の観点から優位性があります。しかし現段階でナトリウムイオン電池のエネルギー密度や出力密度はリチウムイオン電池に劣っており、さらなる高性能化のために全く新しい材料の開発が強く望まれています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の勝山湧斗(博士課程学生)およびRichard B. Kanerディスティングイッシュトプロフェッサー、東北大学の材料科学高等研究所 工藤朗 助教および学際科学フロンティア研究所 韓久慧 助教、ジョンズホプキンス大学の陳明偉 教授、東北大学の多元物質科学研究所 小林弘明 講師、本間格 教授らの日米共同研究チームは、ナトリウムイオン電池の負極に適したハードカーボンからなる連続周期構造の”カーボンマイクロラティス”を3Dプリンタで作製しました。格子中の空隙が高速イオン輸送を可能にし、固体中の低速な拡散に制限されていた電極面積当たり容量を4倍に引き上げ、世界最高レベルの性能を達成しました。(2022年7月14日:材料科学高等研究所 助教 工藤朗)

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3.レーザースキャンと3D画像で地中埋設物を高精度に可視化できる新技術を開発 ~老朽化したインフラ点検の効率化に期待~

経年劣化する埋設物の敷設替え需要が増大するなか、水道や下水道、送電線の埋設管などの埋設物損傷事故により住民生活に支障が生じるケースが全国各地で発生しています。事故要因の多くが正確な埋設位置が把握できないことがあげられています。

東北大学未来科学技術共同研究センターの吉川彰教授・大橋雄二准教授らのグループは、東北大発ベンチャーの株式会社XMAT(仙台市)の面政也代表取締役らとともに、3D測量技術と拡張現実を組み合せて活用することにより、埋設物の精度の高い可視化技術の開発に成功しました。

本技術は、レーザースキャンで埋設時に埋設物の位置を3D点群情報として測定・把握して拡張現実空間上に座標変換し、ウェアラブルグラスを用いて3D点群データを表示することで、地中に埋まっている埋設物をあたかも透視しているかのような臨場感を得ることが可能になります。埋設物の正確な位置情報が視覚的に把握できるため、埋設物の維持管理作業の効率化や事故軽減に大きく貢献できます。また建設工事および構造物のアセットマネジメントのDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進に貢献することが期待されます。(2022年7月29日:未来科学技術共同研究センター 准教授 大橋雄二)

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グリーンシーズ研究会(7月)レポート

第6回目のグリーンシーズ研究会は、東北大学大学院電気通信研究所の深見俊輔教授にご登壇いただきました。演題は「低炭素社会実現に向けたスピントロニクス×半導体素子研究」です。

深見先生にご登壇いただきました。

深見先生が研究されているスピントロニクスでは、これまで別々に利用されてきた電子の持つ二つの性質―電荷(電気的性質)とスピン(磁気的性質)―を同時に利用することで発現される新しい物理現象を明らかにし、高機能で低消費電力なエレクトロニクス・情報処理通信の実現に貢献することを目指しています。

IoT社会は、生産や物流などの事業活動を大幅に効率化することで低炭素社会の実現や快適で便利な生活に貢献している一方で、爆発的なスピードで増え続ける通信機器やサーバーとそれを維持するための設備が莫大な電力を消費し続けている現実があります。スピントロニクスは、半導体の圧倒的な省電力化を実現できることはもちろんのこと、バッテリーやコンセントからの電源供給を必要としない電子機器の実現をも可能とし、この大きな社会課題を解決する救世主になると期待されています。

今回の研究会では、最新の研究動向として、スピントロニクスによる確率論的コンピュータについても解説いただきました。量子コンピュータは、重ね合わせや量子もつれと言った量子力学的な現象を用いて従来のコンピュータが現実的な時間や規模で解けなかった最適化問題などを解くことが期待されるコンピュータですが、その実用化は2050年頃と言われています。深見先生らの研究チームは、スピントロニクスの原理を応用し、量子コンピュータで用いられる情報単位である量子ビットと類似した確率ビット素子(疑似量子ビット)の開発に成功しました。この確率ビット素子は、既存の半導体製造技術にて製造可能なことから、確率ビット素子を用いた確率論的コンピュータは、2030年頃には実用化可能であろうとのこと。世界中の多くの研究者がしのぎを削って研究開発に取り組んでいる量子コンピュータよりも20年も早く、最適化問題や機械学習といった計算論的複雑性の高い問題を解くことができ、しかも室温で動作する新概念のコンピュータが誕生することになります。深見先生らの今後の研究成果に大きく期待が膨らみます。

グリーンシーズ研究会のオンデマンド視聴について

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