東北大学 GREEN TOPICS
1.特定のレアメタルだけには依存しないリチウム蓄電池正極材料の合成に成功
層状岩塩型構造を単独では形成しない遷移金属元素が多数含まれるリチウム遷移金属複合酸化物の合成に成功しました。コバルトやニッケルといった特定のレアメタルに依存しない柔軟な材料設計の可能性を示唆するものです。(2022年4月12日:金属材料研究所 助教 河口智也)
2.東北大学・芝浦工業大学・静岡大学の研究グループが 「廃プラ新法」に対応できる新技術開発
テラヘルツ波の特性を利用して既存の識別装置では識別が難しかった、黒色プラ、添加剤や難燃剤などが含まれている混合プラを識別することができる技術が開発されました。(2022年4月 1日:国際文化研究科・環境科学研究科 教授 劉 庭秀)
3.空気中の水分の脱挿入が容易な層状構造化合物を発見
層状構造を有しカリウムを含む二酸化マンガンが、高速で繰り返し使える低級廃熱用蓄熱材料として利用可能であることを発見しました。工場廃熱の回収、昼間の太陽熱を利用して蓄熱し、夜間暖房、自動車エンジンの暖気など幅広い応用が期待されます。(2022年3月18日:金属材料研究所 教授 市坪 哲)
グリーンシーズ研究会(3月)レポート
第2回目のグリーンシーズ研究会は東北大学災害化学国際研究所の越村俊一教授にご登壇いただきました。演題は「リアルタイム津波浸水被害予測技術が拓く新しい防災情報」です。
越村先生はスーパーコンピュータの利用により、地震発生後短時間で津波浸水被害予測・配信を行う技術の開発に産学連携で取り組んでいます。2017年には「トリプル10(テン)チャレンジプロジェクト」と称して、10分以内の津波発生予測、10分以内の浸水被害予測を10メートルメッシュで行うという技術的な課題に挑戦して、世界初のスーパーコンピュータによるリアルタイム津波浸水・被害予測システムを開発・実用化しました。現在では、内閣府の災害対応にも利用されています。また、東北大学発ベンチャーRTi-castを設立し、リアルタイム津波浸水被害予測システムの社会実装を進めています。
今年に入り、政府は南海トラフ地震の40年以内の発生確率を90%程度に引き上げました。越村先生は「津波から身を守る技術の開発は、研究に携わるわれわれだけの問題ではなく、社会全体の問題として取り組まなければならない。将来、津波に強い街・社会をぜひ皆さんと一緒につくっていきたいと思います。」と使命感をもって参加者に語りかけられる姿が大変印象に残りました。
QAセッション
Q.東日本大震災から約10年、国の津波予報のレベルは上がっているのでしょうか
A.気象庁の津波予測はマグニチュードをもとに行われます。当時はあまりの揺れの大きさに地震計が振り切ってしまったことでマグニチュードの値が小さく見積もられ、その後の予測に影響が出てしまいました。現在は振り切らない地震計が配備・改善されています。
まず命を守るための情報(到達時刻予想、高さなど津波そのものの情報)として気象庁の情報を、われわれのシステムによる情報発信は「どこまで水がくるのか」というところで使い分けていって欲しいですね。
Q.病院や介護施設との連携事例などはありますか
A.病院施設の被害予測は、研究としては既にあります。医療にどう活用するかという研究ですね。「研究成果は社会に実装する」といのが私のモットーですので、いずれ病院システムの革新的な技術として皆さんの目に触れることを目指しています。
Q.アプリ開発の予定はありますか
A.作っていないことはないのですが、われわれのコアな技術(領域)としてアプリ開発は位置付けていないです。アプリ開発を行っている企業、メーカーはたくさんあるので、(自社開発ということではなく)コラボレーションとして広げていければと考えています。